業務提携契約書とは?業務委託契約書との違いも解説|弁護士監修

共同開発契約書のチェックポイント

業務提携契約書」は、ビジネスにおいて、企業間での協力関係を築くための締結される基本契約書です。一方、似たような契約書に「業務委託契約書」があります。両者の区別が分からないという質問を受けることもあります。そこで、今回はこれらの契約書がどのように異なるのか又は共通するのか、そしてどのような場面でそれぞれが使われるのかについて、契約書自動チェックサービス”CollaboTips”[コラボ・ティップス]を監修するメリットパートナーズ法律事務所の弁護士が解説します。


目次

業務提携契約書とは?

業務提携契約書は2つ以上の企業が特定の業務で協力し合うための基本的な枠組みを定める契約書です。業務提携は、単に製品やサービスを共同開発する技術提携だけでなく、生産提携販売提携など、さまざまな形態で行われます。その契約書は、企業間の協力関係の範囲目的責任分担期間成果物など、業務を行うための基本的な条件を明確にする役割を果たします。

業務提携契約書はあくまで大枠の協力の枠組みを定めるものであり、具体的に業務をどのように実施するかに関しては、別の契約書(業務委託契約書)が締結されることも多いです。たとえば、生産提携の場合、最初に業務提携契約書で提携の目的や役割分担を定め、その後、実際の生産活動においては、別に製造委託契約書又は製造委託基本契約書を作成したり、個別の受発注で書類を取り交わすことがあります。

業務委託契約書とは?

業務委託契約書は、ある企業が、他の企業に、委託料を支払って何かの業務を遂行してもらうために結ぶ契約書です。業務委託契約書は、企業が他の企業に業務を委託し、委託料を支払うことが一般的です。業務提携契約書が協力の枠組みを示すものであるのに対して、業務委託契約書はその枠組みの中で実際にどのような業務を誰が、どのように行うのかを具体的に定めるものです。

業務提携契約書と業務委託契約書の違い

業務提携契約書と業務委託契約書には、以下のような違いがあります。

業務提携契約書業務委託契約書(単独契約の場合)
企業間での協力の枠組みを定める実際に業務を委託し、委託料が支払われる契約
提携の目的や範囲、責任分担を明確にする業務の実施方法、納期、報酬などを明確にする
企業間の協力における大枠の取り決め実務的な業務遂行における詳細な条件を定める

つまり、業務提携契約書協力関係の枠組みを取りまとめるもの金銭的な対価の取り決めが無いこともある)ですが、業務委託契約書では委託料が支払われることを前提にした業務の委託の内容が定められます。

業務提携契約書が業務委託の基本契約書の役割を果たすことがある

業務提携契約書が、実質的に業務委託基本契約書の役割を果たす場合もあります。特に、業務提携契約書の内容が、業務委託契約書や業務委託基本契約書の基本的な枠組みを包含する場合、業務委託契約書を別途締結しなくても、業務提携契約書だけで業務遂行に関する基本的な取り決めが済んでしまうことがあります。

例えば、生産提携において、企業Aが企業Bに製品の製造を委託し、その後の取引については個別に業務指示を行う場合、最初に交わされる業務提携契約書には、製造の範囲、品質基準、納期、報酬など、業務委託契約書に含まれるべき基本的な取り決めがすでに盛り込まれていることがあります。この場合、業務提携契約書が業務委託基本契約書として機能するため、別に基本契約書を作成することなく、その提携契約書に基づいて個々の受発注の業務が進行することになります。

業務委託基本契約書とは、同じ当事者の間で、受発注が繰り返される場合を想定し、委託業務を進めるための基本的な枠組みを定めるものであり、その基本契約書の締結後に、個別の業務に関する詳細は別途の契約書で定めることが多いです。この基本契約書では、業務の範囲、報酬、契約期間、業務の遂行方法、守秘義務などの基本的な事項を規定します。

したがって、業務提携契約書を検討する際は、業務委託基本契約書の性質が有することが多いことを想定し、その業務提携が、業務委託のどの種類に近いものかを確認すると理解しやすいと言えるでしょう。

業務提携の中で締結される業務委託契約書の種類

それでは、業務提携契約書の種類を、業務委託契約書の種類に照らし合わせて、具体的な例を見てみましょう。

技術提携(共同開発契約)

技術提携においては、企業が共同で技術を開発するための共同開発契約書を締結することがあります。この契約書では、開発の進捗状況や成果物の取り決めがなされますが、一方の企業が開発業務を他方の企業に委託し、その報酬を支払う場合には、実質的には技術開発委託契約書に近い形になります。

生産提携(製造委託契約)

生産提携においては、企業が製品の製造を外部の企業に委託する場合、製造委託契約書が締結されます。この契約書では、製造業務の具体的な内容、納期、価格、品質管理などが詳細に定められます。そして、製造委託基本契約書では、製造業務の基本的な枠組みや責任範囲を基本契約書で定めます。例えば、製造の範囲、個別発注の方法、品質基準、支払い条件、責任分担などの基本的な枠組みが取り決められます。そして、具体的な製造業務は後続の発注書や個別契約書に委ねられることが一般的です。

販売提携(ビジネスマッチング業務委託契約)

販売提携において、企業が他の企業に顧客の紹介を依頼する場合、ビジネスマッチング業務委託契約書が締結されます。ビジネスマッチング業務委託契約書は、委託企業Aの委託を受けて、その顧客候補の取引先を多く持つ受託企業Bが協力してビジネスマッチングを行う場合に締結される契約書です。この契約書も業務委託契約書の一形態と考えられ、ビジネスマッチングに必要な業務(情報提供、調査、仲介など)を委託する契約となります。そして、ビジネスマッチング委託契約書では、委託範囲や報酬体系、責任範囲などの基本的な大枠を定めるものであり、後続の個々のビジネスマッチングにおいて、顧客紹介が行われて委託者が顧客に商品やサービスを販売すると、それに応じて成功報酬が支払われます。

まとめ

業務提携契約書と業務委託契約書は、その内容と目的において異なりますが、実際には密接に関連しています。業務提携契約書が、業務委託契約書の基本的な枠組みを定めることもあります。そのため、業務提携契約書を検討する際には、業務基本契約書のどの種類に当たるのかを考えながら、契約書を検討するようにしましょう。

提携タイプ業務委託契約書の種類内容の概要補足
技術提携共同開発契約書技術開発を共同で行う契約。開発の対象や成果物の取り決める。一方が開発業務を他方に委託し、その報酬を支払う場合、技術開発委託契約書に近いことがある。
生産提携製造委託基本契約書製品製造を外部企業に委託する契約。納期、価格、品質基準などの大枠を定める。製造委託基本契約書は基本的な枠組みを定め、個々の取引は発注書や個別契約書で定める。
販売提携ビジネスマッチング業務委託契約書顧客紹介やビジネスマッチングを行う契約。委託範囲、報酬体系、責任範囲などの基本的な取り決め。後続の個別の紹介の成果に応じて、個別に成功報酬が支払われる。

コラボ・ティップス監修:メリットパートナーズ法律事務所

メリットパートナーズ法律事務所は、2011年に設立されました。著作物や発明、商標など知的財産やM&A等の企業法務を取り扱い、理系出身の弁護士や弁理士も在籍しています。「契約書をもっと身近にする」との思いで2022年、契約書チェック支援サービス“Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を開発しました。分かりづらい契約書の全体像を「見える化」して、押さえるべきポイントが分かるようになり、企業間コラボレーションの促進を後押しします。 

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