ライセンス契約とは?種類やロイヤリティの決め方などを解説|弁護士監修
ライセンス契約は、特許権、商標権、著作権等で保護される知的財産を第三者に使用許諾するための契約です。企業や事業者が、自社の技術やブランド、コンテンツを外部に提供するために結ばれるこの契約は、ビジネスの成長を支える強力な手段となり得ます。しかし、ライセンス契約を理解することは、意外に難しい部分もあります。どのような種類があるのか、ロイヤリティ(使用料)はどのように決めるべきか、契約書に記載すべき内容は何か…など、重要な要素がたくさんあります。この記事では、ライセンス契約の基本から、その種類、ロイヤリティの決め方、契約書に記載すべき内容までを、契約書自動チェックサービス”CollaboTips”[コラボ・ティップス]を監修するメリットパートナーズ法律事務所の弁護士が解説します。
ライセンス契約とは?
ライセンス契約とは、知的財産権(特許権、商標権、著作権など)を保有する権利者が、第三者に対して、その権利を一定の条件で使用することを許諾する契約です。ライセンスを付与する権利者を「ライセンサー」と呼び、その許諾を受ける第三者を「ライセンシー」と呼びます。この契約により、ライセンサーは自社の知的財産を活用して収益を得ることができ、ライセンシーはその知的財産を利用して自社の製品やサービスを開発・販売することができます。
例えば、特許技術の実施を許諾するライセンス契約や、ブランド名の使用を許諾するライセンス契約などが含まれます。また、ソフトウェアや音楽、映画などのコンテンツの使用権を付与する契約もライセンス契約に該当します。
ライセンス契約におけるロイヤリティ(ライセンス料)
ライセンス契約において最も重要な要素の一つが「ロイヤリティ」です。ロイヤリティは、ライセンシーがライセンサーに対して支払う使用料のことを指します。ロイヤリティの決め方には、主に以下の3つの方法があります。
ランニング・ロイヤリティ(出来高払方式)
売上高や製品の販売数量に基づき、ライセンス料率(%)を掛けた金額を支払う方法です。最も一般的な方式で、売上が増えればライセンス料も増えます。
- 定率方式:売上に対して一定の割合を支払います(例:売上の5%)。
- 定量方式:商品1個(又は1アカウント)あたり一定額を支払う方法です。
- ミニマム・ロイヤリティ:売上がゼロの場合でも最低限のライセンス料(保証額)を設定することがあります。
ランプサム・ペイメント(固定額払方式)
最初に一定額のライセンス料を一括で支払い、その後は追加の支払いが発生しない方法です。契約がシンプルで計算が簡単な点がメリットです。
- 特徴:売上に関係なく、契約時に決めた金額が支払われ、追加のライセンス料は発生しません。
- デメリット:商品の成功に関わらず追加収益は得られません。
イニシャル・ペイメント+ランニング・ロイヤリティ(組み合わせ方式)
最初に一定額のライセンス料を支払い、その後も売上に基づくロイヤリティを定期的に支払う方法です。
- 特徴:最初に一時金(イニシャル・ペイメント)を支払い、追加で売上に基づくロイヤリティ(出来高払方式)を支払います。
- メリット:初期のコスト回収をしつつ、ライセンサーも売上に応じた収益を得ることができます。
なお、ロイヤリティの相場は使用される知的財産や業界によって異なるため、契約前に相場を調査することが重要です。
ライセンス契約の種類
ライセンス契約の種類は、以下の表のとおり、主に、ライセンス対象となる知的財産の種類に応じて区別されます。
ライセンス契約の種類 | 説明 |
特許権ライセンス | 特許技術を他者に使用させる契約。新しい製品やサービスを開発する際に活用可能。 |
技術ノウハウ・ライセンス | 技術的なノウハウや製造方法などをライセンスする契約。特許権ライセンスとセットになることがある。 |
意匠権ライセンス | デザインや意匠に関連する権利を使用させる契約。特にファッションやプロダクトデザインで利用される。 |
商標権ライセンス | 商標(ブランド名やロゴ)を他者に使用させる契約。 |
著作権ライセンス | 音楽、映画、ソフトウェアなどの著作物に関連するライセンス契約。特にエンターテイメント業界やIT業界で利用。 |
データ・ライセンス | 特定のデータや情報を他者に提供する契約。市場調査データや業界特有のデータなどを含む。 |
フランチャイズ契約 | 商標やビジネスモデル、運営方法などの営業ノウハウを他者に提供する契約。フランチャイズ店は、フランチャイザー(本店)のブランドやノウハウを活用した事業運営が可能となる。 |
ライセンスの方式
ライセンス契約は、独占的か非独占的かの2つに分けることができます。それぞれの特徴や選択肢について見ていきましょう。
独占的ライセンス
独占的ライセンス契約では、ライセンシーに対してその知的財産を独占的に使用する権利を与えます。ライセンサーは、特定のライセンシー以外にはその知的財産を使用させることができません。その代わり、ライセンシーは高いライセンス料で契約を結びやすくなります。特許庁へ登録できるか否かにより、さらに次の2つに分けられます。
- 専用実施権:特許庁に登録を行う必要がありますが、特許権者がその特許権を第三者に譲渡する場合にも、その第三者に対しても独占的な地位を主張することができます。
- 独占的通常実施権:独占的な権利ですが、特許権者がその特許権を第三者に譲渡した場合、その第三者に対しては独占的な地位を主張できないリスクがあります。
非独占的ライセンス
非独占的ライセンス契約では、ライセンサーは複数のライセンシーに対してその知的財産を使用させることができます。
- 通常実施権設定契約(非独占):最も一般的なライセンス契約形態で、ライセンサーは複数のライセンシーに知的財産を使用させることができます。ライセンサーが複数の企業と契約を結び、それぞれに同じ権利を付与します。
非独占的ライセンスのバリュエーション
以下のように、非独占的ライセンスにはいくつかのバリエーションが存在します:
- クロスライセンス契約:複数の企業が互いに保有する知的財産を交換する契約です。これにより、各企業は相手の知的財産を自由に使用することができます。特に、メーカー等の技術開発分野でよく利用される方式です。
- サブライセンス契約:ライセンシーが得た権利をさらに他者に再実施許諾する契約です。つまり、特許権者(ライセンサー) → ライセンシー(サブライセンサー) → サブライセンシー というように、ライセンシーがサブライセンサーに実施許諾をする契約です。
ライセンス契約書に記載すべき内容
ライセンス契約書には、契約の詳細を明記することが求められます。以下は契約書に含めるべき重要項目です。
契約の対象物
ライセンス対象となる知的財産を具体的に記載します。特許、商標、著作権など、何をライセンスするのかを明確にします。
独占か非独占か
独占的か非独占的かを明確にします。そして、独占的な場合、ライセンサーが自社実施が出来るのか否かも明確にします。
許諾範囲
ライセンスが適用される①地域、②対象製品・サービス、③使用期間等の条件を明記します。
ロイヤリティの金額と支払い方法
ロイヤリティの金額、支払いの方法(例:売上の5%、前払いなど)や期限を記載します。
ロイヤリティの返還の有無
一度支払ったロイヤリティを後日返還することがあるのか否かを明確にします。
売上等の報告義務
売上に応じたロイヤリティを設定している場合、ラインシーに対して報告義務を課す必要があります。売上の報告が適切に守られているかどうかをチェックするため、ライセンサーによる帳簿閲覧権を定めることもあります。
表示義務
商標や著作権を使用する場合、適切な表示義務を定めることが一般的です。
まとめ
ライセンス契約は、知的財産を最大限に活用するための重要な契約です。契約条件が将来のビジネス展開に大きな影響を与えるため、慎重に進める必要があります。特に契約書の作成時には、弁護士や専門家と連携して、内容を正確に整えることが求められます。
コラボ・ティップス監修:メリットパートナーズ法律事務所
メリットパートナーズ法律事務所は、2011年に設立されました。著作物や発明、商標など知的財産やM&A等の企業法務を取り扱い、理系出身の弁護士や弁理士も在籍しています。「契約書をもっと身近にする」との思いで2022年、契約書チェック支援サービス“Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を開発しました。分かりづらい契約書の全体像を「見える化」して、押さえるべきポイントが分かるようになり、企業間コラボレーションの促進を後押しします。