販売店と代理店の違いとは?ビジネスモデルの特徴を解説|弁護士監修
ビジネスの世界では、「販売店」と「代理店」という言葉をよく耳にしますが、これらの違いについては意外と曖昧にされがちです。どちらも製品やサービスを売る役割を担っていますが、実際にはその運営形態や責任範囲において大きな違いがあります。この記事では、「販売店」と「代理店」の違いについて、各々のビジネスモデルの特徴を踏まえて、契約書自動チェックサービス”CollaboTips”[コラボ・ティップス]を監修するメリットパートナーズ法律事務所の弁護士が解説します。
販売店とは?
販売店の基本的な役割
販売店は、商品を仕入れ、消費者や他の販売店に転売する事業者のことです。仕入れた商品を転売することで利益を得るため、商品を購入する際のリスクも負います。販売店は、商品を仕入れた後、最終消費者に直接販売する場合もあれば、他の販売店に卸して販売する場合もあります。
販売店の形態は多様で、自分の店やオンラインショップなどで直接消費者に販売する「小売店」や、商品を仕入れて他の販売店に販売する「卸売業者」など、ビジネスモデルによって異なります。どの形態であっても、商品を仕入れて販売するという基本的な役割は共通しています。
販売店の特徴
- 商品を購入して転売:販売店は仕入れた商品を自らの意思で販売します。仕入れ価格と販売価格の差額(転売差益)が利益となります。
- 在庫リスクあり:商品が売れなければ、在庫として残ります。このため、売れ行きを見極める必要があります。
- 販売価格設定の自由:仕入れ価格に基づいて販売価格を設定できます。値引きなども販売店の自由です。
- 顧客クレーム対応:販売店は直接消費者と取引を行うため、顧客からのクレームや問い合わせに対応する責任があります。商品に問題があった場合やサービスに不満があった場合、クレーム対応や返品・交換など、顧客の問題を解決する役割を担います。
例
- 小売店(例:家電量販店やスーパー)
- オンラインショップ(例:Amazonや楽天の出店者)
- 卸売店(例:卸売業者、商社)
代理店とは?
代理店の基本的な役割
代理店は、委託者(メーカーやサービス提供者)から委託を受けて、商品やサービスの販売を支援する事業者です。代理店は商品を仕入れるのではなく、委託者であるメーカーやサービス事業者の商品販売の支援に留まります。そのため、顧客に商品を販売するのは委託者(メーカーやサービス事業者)です。代理店は販売活動を行うことで、手数料やコミッションを得ます。
代理店は「代理店契約」に基づき、企業のブランド名や商品を使ってビジネスを行うため、仕入れリスクはありませんが、売上の一部を手数料やコミッション報酬として得ることが多いです。
代理店の特徴
- 仕入れなし、手数料・コミッション制:代理店は商品の仕入れを行わず、売上が発生すると手数料やコミッションが支払われます。
- 在庫リスクなし:代理店は商品を仕入れることがないため、在庫のリスクは負いません。
- 契約に基づく活動制限:代理店は、委託者との契約に基づき、商品を紹介・販売します。
- 顧客クレーム対応なし:代理店は消費者とは直接取引を行わないため、顧客からのクレームや問い合わせの対応をしないことが多いです。
例
- 不動産仲介業者
- 自動車(新車)ディーラー(例:トヨタや日産の販売代理店)
- 保険代理店(例:生命保険や損害保険の代理店)
販売店と代理店の違い
販売店と代理店の違いを図にすると以下のようになります。
販売店 メーカー → 販売店 →卸売業者 →最終顧客 代理店 メーカー → → → → 最終顧客 └───── 代理店 ─────┘ (※代理店は顧客と直接売買をしない) |
代理店は、売買契約の当事者とならない点が根本的な違いです。このような違いから生じる販売店と代理店の特徴/役割の違いを整理すると次のようになります。
特徴/役割 | 販売店 | 代理店 |
売買関係 | 商品を仕入れて販売 | 商品を仕入れず、代理販売 |
在庫リスク | 販売店が在庫を抱える | 在庫リスクなし |
利益の源泉 | 転売差益(仕入れ価格と販売価格の差額) | 手数料・コミッション |
価格設定 | 販売店が決定 | 委託者(メーカー)の決定に依存 |
顧客からのクレーム | 販売店に責任 | 通常は委託者(メーカー)に責任 |
販売店・代理店が販売促進のために投下する資本 | 比較的大きい | 比較的小さい |
どちらを選ぶべきか?
販売店を選ぶ場合
- 在庫を持ち、自己の顧客を獲得し、販売価格を自由に設定したい場合
- 自分の店舗での販売活動を行い、在庫リスクを引き受ける覚悟がある場合
代理店を選ぶ場合
- 在庫リスクを負わず、手数料やコミッションで利益を得たい場合
- 企業から商品を提供され、販売活動を行うだけでいい場合(顧客からのクレーム対応をできるだけ避けたい場合)
選ぶべきビジネスモデルは、どれだけリスクを取れるか、またどのように利益を得たいかによって変わります。どちらのモデルにもメリットとデメリットがありますので、自社のビジネス戦略やリスク管理に合わせて選ぶことが大切です。
まとめ
「販売店」と「代理店」には明確な違いがあります。販売店は商品を仕入れ、在庫リスクを負いながら販売しますが、代理店は商品の仕入れをせず、手数料を得る形で販売を行います。どちらも製品やサービスを販売する役割を担っていますが、それぞれのビジネスモデルに応じた特性を理解し、目的に応じて選ぶことが重要です。
コラボ・ティップス監修:メリットパートナーズ法律事務所
メリットパートナーズ法律事務所は、2011年に設立されました。著作物や発明、商標など知的財産やM&A等の企業法務を取り扱い、理系出身の弁護士や弁理士も在籍しています。「契約書をもっと身近にする」との思いで2022年、契約書チェック支援サービス“Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を開発しました。分かりづらい契約書の全体像を「見える化」して、押さえるべきポイントが分かるようになり、企業間コラボレーションの促進を後押しします。