【共同出願契約書】リーガルチェックポイント7点とは|弁護士監修

共同出願契約書は、複数の当事者が共同で特許出願を行う際に、その費用負担や実施権の許諾などに関して取り決めを定める契約書です。発明が共同で行われる場合や共同事業の中で得られた発明について、予め契約書を通じて詳細に取り決めておくことで、後のトラブルを避け、円滑な協業を促進できます。この記事では、共同出願契約書を作成・レビューする際に押さえておくべきリーガルチェックポイント7点について、契約書自動チェックサービス”Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を監修するメリットパートナーズ法律事務所の弁護士が解説します。

目次

出願発明の特定

共同出願契約書には、出願する発明の特定が明確に記載されている必要があります。発明の名称、発明の概要、発明者の名前などを確定させることで、後の権利帰属の争いを避けることができます。

チェックポイント:

  • 発明の名称や発明概要が曖昧でないか
  • 発明者が正確に記載されているか

権利の持分割合

共同出願契約では、特許権の持分の割合を定めることが重要です。持分の割合は後々の費用負担や収益分配に関わるため、最初に明確に合意しておく必要があります。

チェックポイント:

  • 各当事者の発明への貢献度に見合った持分割合となっているか
  • 費用負担や利益分配と整合性が取れているか

 費用の負担 

特許出願にかかる費用(出願手数料、弁理士費用など)や特許年金、第三者との係争対応費用の負担を契約書で定めます。契約書に定めが無い場合、持分の割合に応じて費用を負担することになりますが(民法253条)、これと異なる定めは可能です。例えば、資力に差がある場合には別途調整することがあります。

チェックポイント:

  • 費用負担が持分の割合と整合しているか。
  • 資力差がある場合を考慮した調整をするか
  • 第三者との係争費用(権利侵害への対処や特許無効審判への対応)まで定めるか
  • 外国出願をする場合の費用負担を日本国の出願費用負担と同じ割合するか

発明の実施に関する規定

特許法上、各当事者はその持分割合に応じて発明を自由に実施できます(特許法73条2項)。しかし、契約書で異なる規定を設けることができます。例えば、相手の同意のない実施を禁止することや、実施予定の無い共同出願人は相手方に自らの不実施による補償を求めることが考えられます。

チェックポイント:

  • 各当事者が発明を自由に実施できるか、または双方で協議して実施するべきか
  • 発明実施に関して、通知や同意が必要かどうかが明確に規定されているか
  • 商業化の収益分配方法や利益分配に関する合意があるか。特に、実施予定の無い共同出願人は相手方に自らの不実施による補償金を求めることがあります。

第三者への実施許諾

特許権が共有されている場合、他の共有者の同意なくして第三者に実施許諾を行うことができません(特許法73条1項)。そのため、第三者への許諾の可否や収益分配方法について事前に取り決めておくことが重要です。

チェックポイント:

  • 第三者への実施許諾の可否や手続きが記載されているか
  • 実施許諾から得られる収益の分配方法が規定されているか。特に、持分の割合に応じて分配する旨を定めるケースも比較的多くあります。

改良発明に関する規定

共同発明から改良発明が生じることがありますが、改良発明は必ずしも共同で行われるわけではありません。もし一方の当事者が単独で改良発明を行った場合、その発明の権利はその当事者に帰属します。
しかし、改良発明が共同発明を基にしている場合、単独創作か共同創作かの認識に齟齬が生じることがあります。このため、改良発明が生じた際には、通知義務を課し、発明の権利帰属を協議することが有益です。ただし、共同発明の改良発明について、発明をしていない当事者への譲渡義務を課すことは独占禁止法の不公正な取引方法(一般指定第12項の拘束条件付取引)に該当する恐れがある点に注意が必要です。詳しくは、公正取引委員会の「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」をご確認ください。

チェックポイント:

  • 改良発明の通知義務や開示義務を相互に課すか
  • 改良発明の譲渡義務を定めて、不公正な取引方法に該当していないか

権利譲渡に関する定め

特許権や特許を受ける権利の譲渡について、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することはできませんが(特許法33条3項、73条1項)、共同出願契約においては、譲渡を認めることも可能です。
また、共同出願契約においては「優先的買い取り請求権」を規定することができます。これは、特許権が第三者に譲渡しようとする場合、他の共有者が優先的にその特許権を買い取る権利を与えるものです。買取価格は、流通性の少ない特許では市場価格を正確に判定することが難しい場合、次の2つの方法があります。

  • 取得費用による決定:発明に要した開発費用や特許化にかかった費用を基に評価する方法です。具体的には、発明の研究開発費用や弁理士費用などを参考にした価格設定が行われます。
  • 将来の予想利益による決定:特許権を活用して得られる利益を基に評価する方法です。特許が商業的にどれだけの利益を生み出す可能性があるかを算定し、それに基づいて買取価格を決定します。

まとめ

共同出願契約書を作成・レビューする際には、権利の帰属、費用負担、実施許諾、改良発明に関する規定など、重要なポイントがあります。これらを契約書に詳細かつ明確に盛り込むことで、将来的なトラブルを回避し、円滑な特許権を活用したコラボレーションが可能となります。

コラボ・ティップス監修:メリットパートナーズ法律事務所

メリットパートナーズ法律事務所は、2011年に設立されました。著作物や発明、商標など知的財産やM&A等の企業法務を取り扱い、理系出身の弁護士や弁理士も在籍しています。「契約書をもっと身近にする」との思いで2022年、契約書チェック支援サービス“Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を開発しました。分かりづらい契約書の全体像を「見える化」して、押さえるべきポイントが分かるようになり、企業間コラボレーションの促進を後押しします。 

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