【契約書】読み方の基本とコツとは|弁護士監修

契約書の読み方の基本とコツ

契約書は読み始めると、文字がたくさん並んでいて、どこから読んでよいのか分からず、頭に入りづらいものです。しかし、契約書はビジネスの条件を定めているものであるため、必ず全体に目を通す必要があります。そこで、このコラムでは、契約書の読み方の基本とコツを、契約書自動チェックサービス”Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を監修するメリットパートナーズ法律事務所の弁護士が解説します。基本とコツさえ押さえれば、契約書の全体がスラスラと頭に入ってくるようになるでしょう。契約書で転ばずに、ビジネスチャンスを掴むためにも、ぜひ最後まで確認してください。

目次

 契約書全体の構造

契約書全体の構造

契約書の項目

契約書は、1契約書名(表題)、2前文、3本文、4後文、5締結日、6記名押印欄から構成されています。
1.表題 法的効力なし
2.前文(契約当事者→契約は「当事者しか」拘束しない)
3.本文
..a.契約毎に特有の条項 b.一般条項
4.後文
5.締結日(署名日→締結日 発行日~終了日→有効期間)
6.記名押印・署名欄
..肩書→代表:基本的には職務権限上の決裁者

「1.表題」は、契約書の種類を示すインデックス(目印)です。法的な効力はありません。
「2.前文」には、契約の当事者が記載されています。誰と誰の契約であるかを確認しましょう。
「3.本文」は、「第〇条」から始まる段落が複数記載されています。取引条件が書かれているパートです。契約書のページで大部分を占める本体です。詳細は後述します。
「4.後文」は、「3.本文」の最後に記載されることが多い定型文です。
「5.締結日」、「6.記名押印欄」は、それぞれ、締結日と締結者の記名捺印をする箇所です。最近は、電子署名も有り、その場合はオンライン上で自動的に表示されることもあります。

本文:契約書の類型毎に特有の条項と一般条項

「3.本文」は、a.契約書の類型毎に特有の条項とb.一般条項からなります。
a.契約書の類型毎に特有の条項は「本文」の前半に集まり、逆に、b.一般条項は「本文」の後半に集まっていることが多いです。

契約書の類型ごとに特有の条項と一般条項

契約書を確認する際に力を入れるべき方は前者、つまり、a.契約書の類型毎に特有の条項です
なぜなら、b.一般条項は、契約書毎に内容が似ており、あまり大きな違いがないことも多く、また万一、見落としても著しい不利益に働くことが比較的少ないためです。

そこで、契約書を読むコツは、b.一般条項については、ある程度の知識は覚えておき、a.契約書の類型毎に特有の条項とb.一般条項とを、大雑把にでも区別できるようになっておくことです。このコラムでも、最後に頻出の一般条項を紹介していますので、確認しておきましょう。

まずは、a.契約書の類型毎に特有の条項から基礎とコツを見ていきましょう。

契約書の種類ごとに特有の条項に重点を置く

契約書の種類ごとに特有の条項に重点を置く

契約書の類型毎に特有の条項に共通し、特に重要な点は以下の3点です。
(1)「何(「物/サービス/情報」)を」提供するのか
(2)「いくらを」支払うのか
(3)時期(納期、支払期限、契約期間)

「何を」を提供する(or提供される)?

提供するものとしては、モノ(商品)のこともあれば、サービスのこともあります。さらに、無体物である知的財産や情報を提供することもあります。
チェックする契約が、何を提供することを予定しているのか、お手元の契約書で確認しましょう。

「いくらを」支払う(又は支払われる)?

「取引」とは、「商品/サービス/情報」 と 「対価(金銭等)」の交換です。
そのため、一方当事者が「何か」を提供した場合、他方の当事者は対価(金銭等)を支払います。
提供されるモノやサービスと、その対価が適正なバランスになっているか確認しましょう。

ただし、例外(対価の定めがない契約書)もあります。例えば、秘密保持契約書、共同開発契約書です。

秘密保持契約書
秘密保持契約書(NDA)は、営業先と情報交換し、取引可能性を検討するために、お互いに相手の営業情報の秘密を守ることを約束する契約書です。情報交換として情報が提供されますが、それに対する対価は通常は発生しません。

共同開発契約書
共同開発契約書とは、自社と取引先の双方が得意とする技術・ノウハウを出し合って、技術的な課題を解決するために、共同して開発を行う際に締結する契約書です。お互いに自己負担で役割分担をすることも多くありますので、そのような場合は対価の定めはありません。

 時期(納期、支払期限、契約期間)の重要性

「何を」、「いくらを」と同じく重要性が高いのは、時期の確認です。モノの納期やサービスの提供時期・期間、及び対価の支払い時期は必ず確認しましょう。
(条項例)
本目的物の納期は、○年○月○日とし、受託者は委託者に対し、納期までに本目的物を完成させ、本目的物を委託者の指定した場所に納品する。
上記ひな形は、例えば、製造委託契約において製品を納品する場合の納期を定めた条項です。自社が製品を納品する受託者である場合、納期に遅れると、委託者から損害賠償請求や契約の解除をされる恐れがあるので、特に自社がサービスの納品をする場合等の納期について注意しましょう。
(条項例)
本業務の委託料は●万円(税別)とし、本契約締結時から 10 営業日以内に全額を、甲が指定する金融機関の口座に振込送金する方法により支払う。
振込手数料は乙の負担とする。
上記ひな形は、業務委託契約における委託料の金額、支払時期および支払方法を定める条項です。特に自社が委託料を支払い立場である場合、支払時期が短すぎないか等、注意しましょう。
(条項例)
本契約は、〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇年〇〇月〇〇日まで有効とする。

契約の有効期間については、後々揉めないように、始期と終期を明確にしておきましょう。

一般条項は簡単に確認する

契約書において、一般条項は定型的に記載されていることが多いですが、念のため、目を通す必要があります。以下では、多くの契約書に共通する頻出の条項9種類を解説します。

秘密保持

(条項例)
1 両当事者は、本契約の遂行の過程で、書面、口頭、電磁的記録媒体その他開示および提供(以下単に「開示」という。)の方法ならびに媒体を問わず、また、本契約締結の前後にかかわらず、一方の当事者(以下「開示当事者」という。)が相手の当事者(以下「受領当事者」という。)に対して開示した一切のデータその他の情報、素材、機器及びその他有体物、本契約の存在・内容、両当事者の協議・交渉の存在・内容、並びに本契約の遂行の過程で知り得た情報([別紙〇〇に列挙のもの含むが、これに限られるものではない。]以下「秘密情報」という。)を秘密として保持し、開示当事者の事前の書面又は電磁的記録(以下「書面等」という。)による承諾を得ずに、第三者に開示又は漏えいしてはならない。
2 前項の定めにかかわらず、次の各号のいずれか一つに該当する情報については、秘密情報に該当しない。
(1) 開示を受けたときに既に保有していた情報
(2) 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
(3) 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し又は創出した情報
(4) 開示を受けたときに既に公知であった情報
(5) 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報
3 受領当事者は、秘密情報について、事前に開示当事者から書面等による承諾を得ずに、本目的以外の目的で使用、複製および改変してはならず、本目的のために合理的に必要となる範囲でのみ、使用、複製および改変できる。
4 受領当事者は、秘密情報を、本目的のために知る必要のある自己[又は親会社、子会社若しくは関係会社]の役員および従業員(以下「役員等」という。)に限り開示するものとし、この場合、本条に基づき受領当事者が負担する義務と同等の義務を、開示を受けた当該役員等に退職後も含め課す。
5 前各項の定めにかかわらず、受領当事者は、次の各号に定める場合、秘密情報を開示することができる。(ただし、1号又は2号に該当する場合には可能な限り事前に開示当事者に通知する。)また、受領当事者は、かかる開示を行った場合には、その旨を遅滞なく開示当事者に対して通知する。
(1) 法令の定めに基づき開示すべき場合
(2) 裁判所の命令、監督官公庁又はその他法令・規則の定めに基づく開示の要求がある場合
(3) 受領当事者が、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、司法書士等、秘密保持義務を法律上負担する者に相談する必要がある場合

秘密保持条項においては、①何が秘密情報にあたるかという秘密情報の定義(上記ひな形1項)と、②秘密保持義務の内容として(ア)第三者への開示等の禁止(同1項)、(イ)目的外使用の禁止(同3項)が定められることが一般的です。

もっとも、公知情報については秘密情報から除外する必要がありますので、秘密情報の例外にあたる情報が規定されることもあります(同2項)。また、自社の役員や従業員をはじめ、秘密情報を開示する必要がある者については、例外的に秘密情報を開示できる旨の規定(同4項、5項)が設けられることもあります。
一般条項の中で、秘密保持の条項は重要性が高いため、しっかりと把握する必要があります。なお、秘密保持については、秘密保持契約書のコラムも読んでみてください。

個人情報の取り扱い

(条項例)
1 各当事者は、本契約の遂行の過程で、相手の当事者から知り得た個人情報(個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)2条6項で定義される個人情報をいう)(以下「本個人情報」という)について、個人情報保護法20条に基づく安全管理措置を遵守し、第三者に開示又は漏洩してはならない。
2 本個人情報を受領した当事者(以下「受領当事者」という)は、本個人情報を、本契約の遂行のためにのみ使用、加工、複写等するものとし、他の目的に使用、加工、複写等してはならない。
3 受領当事者は相手の当事者に対して、毎年〇月末日及び〇月末日限り、個人情報の管理状況について報告する。また、相手の当事者は受領当事者に対し、年〇回以上、必要に応じて、立ち入り検査ができる。
4 受領当事者において、万一、個人情報の漏洩等の事故が発生した場合には、受領当事者は相手の当事者に対し、直ちに当該事故の発生の日時・内容その他詳細事項について報告する。また、受領当事者は、自己の費用において、直ちに漏洩等の原因の調査に着手し、[直ちに/遅滞なく/速やかに]相手の当事者に対し調査の結果を報告するとともに、相手の当事者が満足する内容の再発防止措置を講じ、相手の当事者に対しその内容を報告しなければならない。

「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」という)第25条は、個人データの取扱いの委託をする場合の、委託先(受託者)への監督義務を義務付けています。

上記ひな形は、同条を踏まえ、委託者が受託者に個人データの取扱いを委託する場合に適切な監督ができるように、委託者・受託者間で定める条項です。

反社会的勢力の排除

(条項例)
1 両当事者は、相手の当事者に対し、次の各号に該当しないことを表明及び保証し、かつ将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。
(1)自ら又はその役員若しくは従業員(以下、「役員等」と総称する。)が、暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団その他これらに準ずるもの(以下、「反社会的勢力」と総称する。)であること。
(2)資金提供その他を通じて反社会的勢力の維持、運営若しくは経営に協力若しくは関与する等、自ら又はその役員等が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること。
(3)前二号に該当しなくなったときから5年を経過していないこと。
(4)反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約を締結すること。
(5)自ら又は第三者(役員等を含むが、これに限られない。)を利用して、相手の当事者に対し、次に掲げる行為又はこれに準ずる行為を行うこと。
①暴力的な要求行為
②法的な責任を超えた不当な要求行為
③取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
④風説を流布し、偽計を用い又は威力を用いて、相手の当事者の信用を毀損し、又は相手の当事者の業務を妨害する行為
2 両当事者は、第1項に違反した場合又は第1項に違反するおそれが生じた場合、直ちに書面にて、その旨及び具体的な事実を相手の当事者に通知しなければならない。
3 両当事者は、相手の当事者が第1項に違反するとき、何らの催告なくして直ちに本契約を解除することができる。なお、本項に基づく契約の解除は、損害賠償請求を妨げない。
4 両当事者は、相手の当事者の取引先が第1条各号の一にでも該当することが判明した場合、相手の当事者に対して、当該取引先と相手の当事者との間で締結される契約を解除する等必要な措置を講じるように求めることができる。
5 本条に基づき本契約を解除した当事者は、当該解除により相手の当事者に生じた損害等を賠償又は補償する責任その他一切の責任を負わないものとする。

各種契約から反社会的勢力排除を徹底するため、反社会的勢力からの被害防止を図るためには、「反社会的勢力の排除条項」の導入・活用が必要不可欠です。

あらかじめ契約当事者が反社会的勢力でない旨を相互に確約すること(上記ひな形1項)や、契約後において取引の相手が反社会的勢力であったことが判明した場合等に、契約の解除等速やかに反社会的勢力の排除の対応ができること(同3項)、等を定めておきましょう。

契約違反解除/中途解約

(条項例)
1 当事者は、相手の当事者に次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合には、何らの催告なしに直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。
(1)本契約の条項について重大な違反を犯した場合
(2)支払いの停止があった場合又は競売、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始の申立てがあった場合
(3)手形交換所の取引停止処分を受けた場合
(4)その他前各号に準ずるような本契約を継続し難い重大な事由が発生した場合
2 当事者は、相手の当事者が本契約のいずれかの条項に違反し、相当期間を定めてなした催告後も、相手の当事者の債務不履行が是正されない場合は、本契約の全部又は一部を解除することができる。
3 第1項又は第2項に基づく解除は、解除した者による損害賠償の請求を妨げない。

契約解除に関する規定です。
上記ひな形では、①相手方との契約を維持する信頼関係が破綻したような場合に、無催告での解除を認める例(同1項)や、②相手方の債務不履行が是正される見込みがあるような場合に、催告を条件とした解除を認める例(同2項)を挙げています。

なお、時々、解除事由に特有の項目が入っていることがあります。例えば、ライセンス契約において、利用者(ライセンシ)がライセンサの権利の有効性を争った等の解除事由が設けられることがあります。すこし専門性が高い契約書で設定されることが多いので、そのような契約書については専門の弁護士へ相談することがオススメです。

損害賠償

契約に不履行があった場合の損害賠償責任について定める規定です。
(条項例)
甲及び乙は、本契約に違反して、相手方に損害を与えた場合には、相手方に対し、損害(相手方の弁護士費用を含む。)の賠償をしなければならない。

上記ひな形は、民法の規定(第416条)と異なる内容を定めたものではない確認的な規定と考えられますが、以下の2つのパターンのように、契約の実情を踏まえ、民法と異なる内容を定めることも考えられます。

パターン1は、例えばNDAで、秘密保持義務違反による損害の立証は困難であることから、違約金を予め定めておくような場合に用いられます。
パターン2は、損害賠償の金額が過大になることを回避するため、損害賠償額の上限を委託料を限度とすることを定めているものです。

パターン1:違約金を定める方法
(条項例)
一方の当事者が、本契約に違反して相手の当事者に損害を与えた場合は、相手の当事者に対し、違約金〇〇円を支払う。ただし、当該違反により相手の当事者に生じた損害が本違約金額を上回る場合、違反をした当事者は、その超えた部分についても賠償する
パターン2:損害額の上限を定める方法
(条項例)
1 当事者は、本契約に違反して相手の当事者に損害(合理的な範囲の弁護士費用を含む。)を与えたときは、相手の当事者に対して当該損害を賠償する責任を負う。
2 前項の損害賠償の累計総額は、本契約の委託料を限度とする。

不可抗力

天災や戦争など、契約当事者には予見不可能な不可抗力というべき事情によって、債務が履行できない場合に、債務不履行責任を負わないことを定めた条項です。
(条項例)
1 地震、台風、津波その他の天変地異、戦争、暴動、内乱、テロ行為、輸送機関・通信回線等の事故、疫病、その他不可抗力(総称して以下「不可抗力事由」という。)による本契約の全部又は一部の履行遅滞又は履行不能については、いずれの当事者もその責任を負わない。但し、当該事由により影響を受けた当事者は、当該事由の発生を速やかに相手方に通知するとともに、回復するための最善の努力をする。
2 不可抗力事由が生じ、〇日以上継続する、又は本契約の目的を達成することが困難であると認めるに足りる合理的な理由がある場合には、両当事者は、(不可抗力事由発生時点までに既に発生していた対価及び費用、並びに不可抗力事由発生中の費用支払を除き)双方とも損害賠償義務を負わず、協議の上、書面により契約を解除することができるものとする。

不可抗力事由の範囲をどの程度広く(狭く)列挙するかが、当事者間の主な争点になると考えられます。例えば、業務委託契約においては、受託者としては不可抗力事由を広くすれば、それだけ免責を受けられる範囲が広くなり有利になると考えられます。委託者としてはその逆で、なるべく不可抗力事由を狭くしておくことが考えられます。

権利・義務の譲渡禁止

契約上の権利義務等について、相手方の承諾なく譲渡できないとする規定です。
(条項例)
いずれの当事者も、相手の当事者の事前の書面による承諾なくして、本契約上の地位を第三者に承継させ又は本契約から生じる権利義務の全部若しくは一部を第三者に譲渡し、引き受けさせ、若しくは担保に供してはならない。

相手方が、契約上の権利義務を第三者に自由に譲渡できるとすると、第三者が無資力だったり、契約上の義務を履行できない者であったりした場合にリスクを負うことになります。そこで、本ひな形のような権利・義務の譲渡禁止特約を締結しておくわけです。

裁判管轄

紛争解決手段に関して、裁判手続きで解決することを前提とする場合、その際、どこの裁判所に訴訟を提起するか定める条項です。
(条項例)
本契約に関する紛争については、●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

「当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。」(民事訴訟法第11条1項)と規定されていることから認められるものです。

合意がない場合は、民事訴訟法の規定に従って、裁判管轄が決まりますので、契約相手方の本店所在地が遠方の場合、相手方と合意の上、裁判管轄の条項を盛り込んでおくことが考えられます。

その他

(条項例)
一方の当事者に次の各号に掲げる事項の一つにでも該当する事由が生じたときは、当該当事者は本契約[又は本契約に基づく個別契約]により相手の当事者に対して負担する一切の債務について期限の利益を喪失し、直ちにその債務を相手の当事者に弁済する。
(1)本契約に定める条項に違反し、相手の当事者に対し催告したにもかかわらず〇日以内に当該違反が是正されないとき
(2)監督官庁より営業の許可取消し、停止等の処分を受けたとき
(3)支払停止若しくは支払不能の状態に陥ったとき、又は手形若しくは小切手が不渡りとなったとき
(4)第三者より差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立て、又は公租公課の滞納処分を受けたとき
(5)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始の申立てを受け、又は自ら申立てを行ったとき
(6)解散、会社分割、事業譲渡又は合併の決議をしたとき
(7)資産又は信用状態に重大な変化が生じ、本契約に基づく債務の履行が困難になるおそれがあると認められるとき
(8)その他、前各号に準じる事由が生じたとき

期限の利益とは、債務者が契約で定められた期限(例えば、代金の支払期日)までは、債務を履行しなくても債務不履行にならないといった利益を指すわけですが、債務者の信用状態が急激に悪化したような場合に、当該期限まで債務の履行を待たなくてはいけないとするならば、債権回収ができなくなる恐れがあります。

そこで、相手方の信用状態が急激に悪化したような場合には、相手方が期限の利益を失うこととして、すぐに相手方に債務の弁済を求めることができるようにするための規定です。
(条項例)
1 略
2 本契約の終了後においても、第3条、第4条、第5条の定めは、前項による本契約の終了後〇年間存続する。

契約が終了すれば、通常は契約の全ての条項の効力が失われますが、契約終了後も効力を存続させる条項(残存条項)に関する規定です。

残存条項の中では、特に秘密保持に関する条項について、契約期間のみならず、契約期間終了後にどの程度の期間秘密保持義務を負担するかについて、注意が必要です。自社の核心的技術の情報などは比較的長期の保護が必要となることが考えられます。

まとめ

今回は、初めて契約書を読む方でも、メリハリをもって契約書を確認できるように、契約書全体の構造を説明しました。
(1)「何を」提供する(or提供される)?
(2)「いくらを」支払う(or支払われる)?
(3)時期(納期、支払期限、契約期間)の重要性
とくに、本文について、契約書の種類ごとに特有の条項に重点を置くことが重要です。
(1)秘密保持
(2)個人情報の取り扱い
(3)反社会的勢力の排除
(4)契約違反解除/中途解約
(5)損害賠償
(6)不可抗力
(7)権利・義務の譲渡禁止
(8)裁判管轄
(9)その他

また、一般条項も簡単に確認にするようにしましょう。

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メリットパートナーズ法律事務所は、2011年に設立されました。著作物や発明、商標など知的財産やM&A等の企業法務を取り扱い、理系出身の弁護士や弁理士も在籍しています。「契約書をもっと身近にする」との思いで2022年、契約書チェック支援サービス“Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を開発しました。分かりづらい契約書の全体像を「見える化」して、押さえるべきポイントが分かるようになり、企業間コラボレーションの促進を後押しします。 

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