【PoC、モックアップ、プロトタイプ、MVPとは？】ソフトウェア開発の重要なステップを解説｜弁護士監修

ソフトウェア開発において、製品が完成するまでにはさまざまな種類の試作段階があります。特に、開発の初期段階では、最初から完璧な製品を作り上げることは難しく、試作品を作成し、ユーザーのフィードバックを反映させながら改善を重ねていきます。これらの段階を経ることで、最終的にユーザーのニーズに合った製品を生み出すことができます。
ここでは、開発経験の少ない中小企業やスタートアップ向けに、ソフトウェア開発におけるPoC、モックアップ、プロトタイプ、MVPの意味と、それぞれの役割について、契約書自動チェックサービス”Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を監修するメリットパートナーズ法律事務所の弁護士が解説します。

PoC（Proof of Concept） 〜 技術的な実現可能性とマーケティング検証

PoC（概念実証）は、特定の機能や技術が実際に動作するかどうかをテストするために作成される試作品です。主に技術的な実現可能性を確認することが目的ですが、PoCは技術検証に限らず、マーケティング検証にも使用されることがあります。特に、新しい技術や未確認のアイデアが市場で受け入れられるか、実際に需要があるのかをテストする手段としても重要です。

• 目的: 新しい技術やアイデアの実現可能性を確認し、リスクを最小化するだけでなく、製品が市場で受け入れられるかをテスト
• 特徴: 機能の一部や技術の試験的な実装、動作確認、あるいは市場での反応確認
• 使用タイミング: 新技術やアイデアの初期検証、マーケティング戦略の初期テスト
• 簡易度: 中程度 — 特定技術や機能の試験的実装には一定の開発力が必要、マーケティング検証には追加のリソースが必要

モックアップ（Mockup） 〜 ビジュアルデザインの確認

モックアップは、開発の最初の段階で作成される静的なビジュアルデザインです。主にシステムの外観やユーザーインターフェース（UI）を確認するために使用されます。実際に動作する機能はなく、あくまでデザインに焦点を当てたものです。これにより、UIのレイアウトやユーザーの操作感を早い段階で確認でき、デザインに対する認識のズレを減らすことができます。

• 目的: 視覚的なデザインやレイアウトの確認
• 特徴: 実際の動作はしない、静的なデザイン
• 使用タイミング: ユーザーインターフェースや画面遷移など、デザインを決める最初のステップ
• 簡易度: 非常に簡易 — デザインツールを使って簡単に作成できる

プロトタイプ（Prototype） 〜 ユーザー体験を確認

プロトタイプは、実際に動作する試作品であり、ユーザーの体験をテストするために使用されます。モックアップやPoCとは異なり、プロトタイプは機能が一部でも実装されており、ユーザーが操作することができます。この段階では、システムの機能やインターフェースを確認し、ユーザーやステークホルダーからフィードバックを得ることが重要です。プロトタイプは、製品の方向性を決定するための貴重な情報源となります。

• 目的: ユーザーの体験をテストし、フィードバックを得る
• 特徴: 実際に動作するシステム、ユーザー体験を確認
• 使用タイミング: ユーザーインターフェースや機能に関する調整・改善
• 簡易度: 高め — 実際に動作する部分を作成するため、開発には時間と労力がかかる

MVP（Minimum Viable Product） 〜 最小限の機能で市場投入

MVP（最小実行可能製品）は、製品として市場に投入できる最小限の機能を備えたプロダクトです。MVPの主な目的は、市場で実際にユーザーの反応を得ることです。MVPは、製品の基本的な価値を提供し、ユーザーのフィードバックを収集することで、次の開発サイクルに活かすことができます。この段階では、まだ完成度は高くないかもしれませんが、最も重要な機能だけを実装して市場に出すことで、ユーザーのニーズや製品の方向性を早期に検証できます。

• 目的: 市場投入してユーザーの反応を得る
• 特徴: 最小限の機能でリリース、ユーザーからのフィードバック収集
• 使用タイミング: 製品化前の最終確認、ユーザーの反応を試す段階
• 簡易度: 高い — 基本機能の実装、リリースまでの準備が必要

開発の時間軸に沿った順番

これらの段階は、ソフトウェア開発の時間軸に沿って進んでいきます。次のようになります。

1. PoC: 新しい技術やアイデアが実現可能かどうかを確認
2. モックアップ: 最初の段階で、ユーザーインターフェースやデザインの方向性を決める
3. プロトタイプ: 実際に動作するシステムを作り、ユーザーの体験をテスト
4. MVP: 最小限の機能を備えた製品を市場に投入し、ユーザーからフィードバックを得る

この順番で、製品の方向性や機能が具体的に固まっていきます。必ずしも全ての段階を一つの開発プロジェクトで実施するわけではありませんが、特に中小企業やスタートアップにとって、これらの手順のいずれか一つでも踏むことは、無駄な開発を避け、リスクを最小化するために非常に重要です。

PoC、モックアップ、プロトタイプ、MVPの違い

これらの開発段階をさらに詳しく理解するために、PoC、モックアップ、プロトタイプ、MVPの主な違いを対比表でまとめました。

項目	PoC (概念実証)	モックアップ	プロトタイプ	MVP
目的	新しい技術やアイディアの実現可能性を確認し、リスクを最小化	視覚的なデザインやレイアウトの確認	ユーザーの体験をテストし、フィードバックを得る	市場投入してユーザーの反応を得る
特徴	特定の技術や機能の動作確認	静的なデザイン、動作しない	実際に動作するシステム、ユーザー体験を確認	最小限の機能でリリース、ユーザーからのフィードバック収集
使用タイミング	新技術やアイデアの初期検証、リスクの洗い出し	デザインを決める最初のステップ	ユーザーインターフェースや機能に関する調整・改善	製品化前の最終確認、ユーザーの反応を試す段階
使用者	開発チーム、技術者	デザイナー、開発者、関係者	ユーザー、ステークホルダー	ユーザー、投資家、マーケティングチーム
開発範囲	技術的要素に限定	デザインに限定	機能の一部を実装	最小限の機能、重要な特徴を中心に実装
目的の成果物	特定機能のプロトタイプや動作確認結果	画面遷移やUIレイアウトのイメージ	実際に動作するシステムの初期版	ユーザーに価値を提供できる最小限の製品
簡易度	中程度 — 特定技術や機能の試験的実装には一定の開発力が必要	非常に簡易 — デザインツールを使って簡単に作成できる	高め — 実際に動作する部分を作成するため、開発には時間と労力がかかる	高い — 基本機能の実装、リリースまでの準備が必要

まとめ

PoC、モックアップ、プロトタイプ、MVPは、ソフトウェア開発における重要なステップであり、それぞれが製品開発の異なる側面をカバーします。これらを効果的に活用することで、開発リスクを減らし、ユーザーにとって価値のある製品を迅速に市場に届けることが可能になります。特に、開発の経験が少ない中小企業やスタートアップにとって、これらの段階を順を追って進めることが、成功への近道となるでしょう。