【ソフトウェア開発とは?】「仕様書」決定プロセスの工夫も解説|弁護士監修

ソフトウェア開発は、コンピューターが実行するプログラム(ソフトウェア)を作り上げる一連の作業です。ソフトウェアは、コンピューターやスマートフォン、タブレット、さらには家電製品に至るまで、あらゆるデジタル機器の動作を制御するために必要な命令を提供します。ソフトウェア開発は、特定のニーズや問題を解決するために行われ、デジタル社会の中でますます重要な役割を果たしています。例えば、あなたが使っているアプリやウェブサービスも、すべてソフトウェア開発の結果物です。本記事では、この「ソフトウェア開発とは? 」について、契約書自動チェックサービス”Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を監修するメリットパートナーズ法律事務所の弁護士が解説します。

目次

ソフトウェア開発の種類とは?

ソフトウェア開発にはいくつかの種類があり、それぞれが異なる目的や用途を持っています。代表的なものとして以下の3つを挙げてみましょう。

1. Webアプリケーション開発

Webアプリケーションは、インターネットを通じて使用されるアプリケーションです。ユーザーはWebブラウザを使って、特別なインストール作業なしで、どこからでもサービスを利用できます。データや機能はWEBサーバー上で管理され、インターネット経由でアクセスされます。多くのSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)も、ユーザーがブラウザを通じてアクセスするWebアプリケーションとして提供されるため、実質的にはWebアプリケーション開発の一部と見なされることが多いです。

特徴:

  • ブラウザを介して動作
  • インターネット接続が必要
  • サーバーで管理され、デバイスに依存しない
    : オンラインバンキング、ECサイト、Google Docsなど

2. アプリケーション開発(モバイルアプリ開発、業務支援システム、等)

アプリケーション開発とは、特定のデバイスにインストールして使用するソフトウェアを開発することを指します。このカテゴリーには、モバイルアプリ開発、業務支援システム(ERP・会計ソフトなど)が含まれます。これらのアプリケーションは、Webアプリケーションとは異なり、Webサーバーを利用せず、パソコンやスマートフォンに直接インストールして使用するソフトウェアです。どれもインターネットを利用することはありますが、基本的にインターネット接続を前提としない場合もあります。

モバイルアプリ開発(iOS/Android)

モバイルアプリは、スマートフォンやタブレットにインストールして使用するアプリケーションです。インターネット接続を必要としないオフライン機能を持つものも多く、ユーザーに対してダウンロードとインストールが必要です。なお、Webアプリケーションと組み合わせたモバイル開発も多くあります。

特徴:

  • スマートフォンやタブレットにインストールして利用
  • オフライン利用可能なものも多い
  • 通常、App StoreやGoogle Playなどからダウンロード
    : 業務管理アプリ、フィットネスアプリ、ショッピングアプリなど

業務支援システム開発(ERP・会計ソフトなど)

業務支援システム(ERP、会計ソフトなど)は、企業の業務管理を効率化するために使用されるソフトウェアです。これらは通常、企業内でインストールして使用され、サーバーを通じてネットワーク上で複数のユーザーと連携することもあります。なお、クラウド型のERPや会計ソフトも増えてきており、SaaSとして提供されることが多く、この場合はWebアプリケーション開発の側面もあります。

特徴:

  • ローカルにインストールされ、社内システムとして使用されることが多い
  • ネットワークを通じて、企業内外のデバイスとデータ連携
  • 一部はクラウド型(SaaS)で提供されることもある
    : SAP、Oracle、freee(会計ソフト)、Salesforce(CRM)など 

3. 組み込みシステム開発

組み込みシステムは、日常的に使う家電や自動車、医療機器などの中に組み込まれ、特定のタスクを実行するためのソフトウェアです。例えば、自動車のエンジン管理システムや冷蔵庫の温度調整機能がその一例です。これらはハードウェアと密接に連携して動作し、特定の機器を制御する役割を担っています。組み込みシステムは、しばしばリアルタイム性や効率性が求められるため、特別な技術が必要です。

ソフトウェア開発の主な流れ

ソフトウェア開発は、いくつかのステップで進められます。これらのステップを順に実施することで、品質の高いソフトウェアを作り上げることができます。

ヒアリング、ニーズ調査
ユーザーのニーズを把握するために、ヒアリング等の調査を行います。ユーザーが抱えている問題や求める機能を詳しく聞き出し、要件を明確にします。

要件定義
ヒアリング等のニーズ調査をもとに、どのような機能を実装するか、どのようなシステムを作成するかを具体的に決定します。要件定義は、ソフトウェアの仕様書を作成する工程の一部ともいえます。

設計
ソフトウェアをどのように作成するかの設計を行います。ここでは、システム全体の構造やデザイン、画面遷移などを決定します。この設計の段階までにソフトウェアの「仕様書」(何を開発するのか)が決定されます。

プログラミング(実装)
設計(「仕様書」)に基づいて、プログラムを作成します。プログラミング言語を使って実際にコードを書き、ソフトウェアを動かすためのプログラムを作成します。

テスト(ベンダー実施、ユーザー実施)
開発したソフトウェアが設計通りに動作するかを検証します。不具合があれば修正し、最終的にユーザーに提供する前に十分にテストを行います。先に、ベンダーがテストを行い、その後ユーザー(依頼者等)がテストを行います。

リリース
テストが完了したら、ソフトウェアを正式にリリースします。これにより、ユーザーが実際に使用できるようになります。

運用・保守
ソフトウェアがリリースされた後も、定期的なアップデートやメンテナンスが必要です。問題が発生した場合には修正を行い、機能追加や改善も行われます。

以上の開発工程のうち、(ヒアリング、ニーズ調査)、(要件定義)、(設計)はソフトウェアの仕様(何を作るのか)の確定作業を中心に行う工程であり、上流工程といわれます。ソフトウェア開発のトラブルを防止するためには、この上流工程がもっとも重要な工程であるといっても過言ではないでしょう。

ソフトウェア開発の手法

上流工程では、開発対象のソフトウェアを定める「仕様書」の決定が非常に困難を伴います。「仕様書」決定プロセスの工夫として、ソフトウェア開発にはいくつかの手法があり、それぞれが異なるニーズやプロジェクトに応じて選ばれます。代表的な手法には以下のようなものがあります。

一括請負方式
一括請負方式は、開発者が事前に決められた要件に基づいて、ソフトウェアを一度に完成させる手法です。この手法は、プロジェクトの要件やスケジュールが明確で変更が少ない場合に有効です。請負契約であるため、受託者は納期までにソフトウェアを完成させる義務を負う点に注意が必要です。

プロトタイプ開発方式
プロトタイプ開発方式では、まず最初に簡単な試作品(プロトタイプ)を作成し、ユーザーのフィードバックを基にその後の開発を進めていきます。この方式は、ユーザーのニーズをより明確に把握したい場合に適しています。

多段階方式(マイルストーン方式、ウォーターフォール方式)
この方式では、開発プロセスを複数の段階に分けて進行します。各段階の終了時に評価を行い、次の段階に進む前に問題を解決します。各マイルストーンが重要な成果物を生み出すため、進行状況がわかりやすいのが特徴です。

アジャイル開発
アジャイル開発は、短期間で繰り返し開発を行い、ユーザーのフィードバックを早期に取り入れながら進める手法です。開発は「スプリント」と呼ばれる短い期間で行い、スプリントごとに機能を追加したり、改善したりします。アジャイル開発は柔軟性と迅速な市場投入を重視するため、特にスタートアップや変化の多いプロジェクトに適しています。受託者のプロセスを重視した(仕事の完成義務を負わない)準委任契約であることが多いといえます。

パッケージ開発
以上の①~④は、一からシステムの開発を行うソフトウェア開発(いわゆるスクラッチ開発)ですが、既存のパッケージを利用したソフトウェア開発(パッケージ開発)もあります。
商業的に提供されているソフトウェア製品(パッケージ・ソフトウェア)を基に、カスタマイズして開発を行います。ゼロから開発を行うよりも時間とコスト削減が可能です。しかし、パッケージ・ソフトウェアがユーザー(顧客)に特有の個別事情に完全にマッチしない場合があり、その場合、必要な機能をカスタマイズするための追加費用が発生する可能性があります。このようなギャップを無くすためには、事前に、ユーザー(顧客)の要求事項とパッケージ・ソフトウェアの仕様の差分を分析することフィット&ギャップ(F&G)分析が重要です。

ソフトウェア開発とシステム開発の違い

ソフトウェア開発とシステム開発は似ているようで異なる概念です。ソフトウェア開発は、コンピュータープログラム(ソフトウェア)を作ることを指します。一方で、システム開発は、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアやネットワークなども含めた、業務を支えるための総合的なシステムを作ることを指します。システム開発は、ソフトウェア開発の一部として考えることもできます。

まとめ

ソフトウェア開発は、私たちのデジタル社会を支える重要な技術です。どのような分野であっても、ソフトウェアの進化とともに業務の効率化や新しいサービスの創出が可能になります。企業が競争力を維持するためにも、ソフトウェア開発に取り組むことは欠かせません。初心者の方でも、この記事を参考にして、ソフトウェア開発の基礎を学び、次のステップへ進んでいきましょう。

コラボ・ティップス監修:メリットパートナーズ法律事務所

メリットパートナーズ法律事務所は、2011年に設立されました。著作物や発明、商標など知的財産やM&A等の企業法務を取り扱い、理系出身の弁護士や弁理士も在籍しています。「契約書をもっと身近にする」との思いで2022年、契約書チェック支援サービス“Collabo Tips”[コラボ・ティップス]を開発しました。分かりづらい契約書の全体像を「見える化」して、押さえるべきポイントが分かるようになり、企業間コラボレーションの促進を後押しします。 

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